信仰,  釈義

この人こそ生ける神―神の受肉

初めに、ことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった。この方は、初めに神とともにおられた。すべてのものは、この方によって造られた。造られたもので、この方によらずにできたものは一つもない。この方にいのちがあった。このいのちは人の光であった。光はやみの中に輝いている。やみはこれに打ち勝たなかった。

ことばは人となって、私たちの間に住まわれた。私たちはこの方の栄光を見た。父のみもとから来られたひとり子としての栄光である。この方は恵みとまことに満ちておられた。

ヨハネ1:1-5, 14

神が人の姿を取ってこの世に来られたのがイエス・キリストだ。そのことをキリスト教では「受肉」という。英語で incarnation だ。

この「受肉」はクリスマスで良く語られる。神が赤ん坊となり、生まれて下さったのだ。日本語でも良く歌われる聖歌のひとつに「あめにはさかえ」というのがあるが、英語で書かれた2番にはこのような歌詞がある。

Veiled in flesh the Godhead see (肉に覆われた神性を見よ)
Hail the incarnate deity (受肉された神を迎えよ)

しかし、この受肉が語られるのはクリスマス以外ほとんどない。でも神が人となって私たちの間に住まわれたことは、キリスト教信仰の何よりも重要なことだと僕は思う。

旧約聖書を読むと、人々は神が来るのを待ち望んでおられた。神はどのような方か?悪魔と賭け事するような方なのか?(ヨブ記)たくさん捧げ物をして行事を行えば喜んで祝福して下さる方なのか?(レビ記)掟に従えば祝福し、背けば呪いを下す神なのか?(申命記)そもそも神はこの世の諸事情に介入なさるのか?やりたい放題やっても結局同じではないか?(伝道者の書)

旧約聖書時代の人々は、神とはどのような方かを自分たちの世界観を通して対話し、考察、探究したのだ。その答えがイエス・キリストである。

ヨハネは福音書の序論をこう占めている。「私たちはみな、この方の満ち満ちた豊かさの中から、恵みの上にさらに恵みを受けたのである。というのは、律法はモーセによって与えられ、恵みとまことはイエス・キリストによって実現したからである。いまだかつて神を見た者はいない。父のふところにおられるひとり子の神が、神を説き明かされたのである。」(1:16-18)

要するに、神を見たものはいない。旧約時代の神の啓示は不完全なのだ。本当に神を知ることはできなかった。しかし、その神が、ようやく姿を現して下さったのだ。2000年前に、ユダヤのベツレヘムで。

キリストこそが本当の神の姿である。キリストの誕生だけでなく、その教え、奇跡、癒し、貧しい者や虐げられた者、罪人扱いされた者に対する憐れみの心、弟子たちの足を洗うしもべの姿、そして十字架の死にまで身を委ね、その上から敵への赦しを叫ぶ姿。これこそが、大勢が待ち望んでいた誠の神の現れだ。

こんな神像を誰が考えられるだろうか。旧約聖書の預言者たちも考えることができなかった。だから聖書を誰よりも知っていた律法学者やパリサイ人はキリストに従うことができなかった。でもこの方、十字架で死なれたキリストこそが神だと告白するのがキリスト教の信仰である。

王や戦士としてではなく、卑しい乙女マリヤのもとで生まれ、「罪人」と混じって奉仕したイエス。そして平和と敵への愛を説き、人の心を掴んだ。人々は、ローマの圧政からイスラエルを解放するメシヤの到来と期待し、彼を担ごうとしたが、彼は軍事的なメシヤとなることを拒んだ。そして最後は宗教裁判にかけられ、皮肉にもイスラエルとローマの共謀によって十字架で処刑された。

十字架で処刑されるような救い主なんて誰が信じるか?

でも、キリストは3日目によみがえられた。キリストは永遠に生きている神だからだ。死を打ち破ってよみがえられたのだ。キリストの生き方、死に従ってまでも愛と赦しと平和を貫く生き方こそが、命をもたらす神の姿だということが証明されたのだ。

このクリスマスシーズンに「神が人となられた」ことを覚えるときに、キリストの誕生、垂訓、奉仕、受難、復活すべてが天地創造、全知全能の神の現れであることを覚えたい。

このことを美しく表現したクリスマスの唄で締めたい:「この人を見よ」

まぶねの中にうぶ声あげ たくみの家に 人となりて
貧しきうれい生くる悩み つぶさになめし この人を見よ

食するひまもうち忘れて しいたげられし 人をたずね
友なき者の友となりて 心砕きし この人を見よ

すべてのものを与えしすえ 死のほかなにも報いられで
十字架の上にあげられつつ 敵を赦しし この人を見よ

この人を見よ この人にぞ こよなき愛は あらわれたる
この人を見よ この人こそ 人となりたる 生ける神なれ

Merry Christmas to you all!!

1件のコメント

  • 後藤 修一

    いやぁ! アーメン
    これを読んで反論するなら、是非聞いてみたい